リフォーム・リノベーション専門雑誌「プランドゥリフォーム」に掲載中のコラムのウェブ版です。
この8月、弟ワンコは12歳のお誕生日を迎えた。犬歳で見ると、わたしよりも年上だ。あたり前だけれどワンコも老いてくると、病院にかかることが増える。かくいう我が家の弟ワンコも2年前から心臓のお薬を飲んでいる。よく見ると、ワンコのお薬には人間と同じものが多い。前に飲んでいたお薬や、いま飲んでいるお薬の1つは人間と同じものだ。
お兄ちゃんワンコも歳をとるとともに目の潤いがなくなり、目やにが固まった。病院から目薬を処方されたが、黙って入れさせてくれるはずはなく悪戦苦闘。諦めて何軒か病院を巡った時、ある先生が英語表記のジェル状ヒアルロン酸を処方してくれた。目やにを綺麗に拭いて閉じた目の隙間にぬりぬり…。嫌がることなく入れることができた。
乾燥から解放された目はクルンと開き、それからは目の上にジェルをぬるのが毎朝の日課になった。動物専門薬は欧米で早くから開発が進み、日本は遅
い方だと知ると、ちょっと納得できるところがあったりする。
昔は、病院が閉まったあとにワンコの具合が悪くなると、不安な気持ちで朝が来るのを待つしかなかったけれど、いまは夜でも診てくれる病院がある。わたしが暮らす札幌には「札幌夜間動物病院」があり、動物病院が閉まったあとの夜7時から朝6時まで診療してくれる夜間専門の病院だ。MRIやCTなど最新の設備を備え、救急の知識を持った先
生たちが小さな命を助けるために365日対応してくれる。
日本の動物の救急医療は世界から見ると遅れているそうだ。アメリカやヨーロッパでは動物の救命救急の教科書が存在し授業もあるけれど、日本の獣医学分野には、体系的に学べる救急医療の講座がなく、先輩の教えや文献、現場での経験から技術やノウハウを磨くしかないのだそうだ。教科書が存在し授業もあるけれど、日本の獣医学分野には、体系的に学べる救急医療の講座がなく、先輩の教えや文献、現場での経験から技術やノウハウを磨くしかないのだそうだ。そんな先生たちの努力により、弟ワンコは何度も命を救ってもらった。札幌以外も、夜間にしっかりと対応してくれる病院を増やせたらどんなに安心だろうと思う。
ふだん飲んでいる薬や病院の検査結果、食べているフードなどはメモしておくと安心だ。楽しい時と同じくらい大変な時こそ愛しいのは、飼い主みんなの共通の想い。
ワンコと一緒に歳をとる幸せを、まだまだ味わいたいと思っている。
作家・エッセイストの千石涼太郎さんのエッセイ
救急救命士で救急医療に従事したのち、カイロプラクティックを学び、開院した経緯をもつ院長が綴る健康コラム
犬との暮らしを綴ったほのぼのコラム