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[樹齢]


 無垢材の家具は、楢や胡桃など、多くの場合、広葉樹を使います。広葉樹は、針葉樹と比べると、ゆっくりと成長します。杉やひのきなどの針葉樹は、40年~60年で建築に使えるくらいの太さに成長しますが、広葉樹は、80年~100年くらいの年月をかけて、やっと家具や建築の材料になります。
 木の年齢は、年輪に表れます。年輪は、1年かけて1本作られます。木は、春になると、ぐんぐん成長して、密度の粗い年輪ができます。夏から秋にかけては、ゆっくり成長し、春よりも細く、密度の詰まった年輪が作られます。年輪の幅や状態は、その年の気候変動で、密度や色が微妙に変わるそうです。気候変化のほかにも、森の環境が大きく変化した年は、年輪に、その痕跡が残されていることがあるそうです。


年輪には、森の歴史も刻まれているわけです。100本の年輪は、100年の時を経ていると思うと、木を大切に使いたいと、心から思います。
 長い年月をかけて育ってきた木の歴史「年輪」は、「木目」という模様になります。普段、私たちが目にする家具や内装の木目模様は、年輪を横から見ていることになります。木目が見える室内にいると、格段に安らぎ感が増すそうです



槐(エンジュ)を使った施工例

槐の化粧柱と梁。奥の梁は、欅の曲り木を使用。


塗り壁に、耳付の槐を格子に組んだ腰壁風の装飾。


[100年使える]


 木は、森で生きた年月だけ、伐採してからも生きるといわれています。製材し、乾燥させた木材は、強度があります。鉄やコンクリートと比べると、木は想像以上に強い素材であることがわかります。例えば、同じ重さで比較すると、スギの引張強さは、鉄の約4倍。コンクリートの225倍。圧縮の強さは、コンクリートの9・5倍です。ほかの素材と比べても、スギの比強度は、大きいことがわかります。このデータからも、木は、丈夫な素材で、木で家具や住まいを作るときは、長く使える構造で、丈夫に作れば、何十年も使うことができます。



[100年使うために]


 木の樹齢と同じ年月を、家具になってからも使えるようにするには、丈夫な造りで製作しなければなりません。木組みで組み立てると、木の本来の強度と耐久性を生かせます。木と木を組んで組み立てることにより、互いに力を支え合い、釘やネジのように、使用しているうちにゆるんだり、錆びたりすることがないので、長く使うことができます。


ホゾ​

ふたつの木材を組み立てる際、基本となるホゾ組み。平ホゾ(左)のほか、
両胴付き2 枚ホゾや元一2 段柄(右)などがあります。




 ホゾは、木材を組み立てる際、基本となる木組みのひとつです。用途に応じてさまざまな種類のホゾがありますが、一番ポピュラーな平ホゾは、ホゾ穴に、ホゾを差し込んで組みます。平ホゾのほか、接合部分の強度を高めた、両胴付き2枚ホゾや、元一2段柄などがあります。木組みは、ホゾのように組立て目的のほかに、室内の湿度変化で起こりうる、反りを防ぐ加工も行います。テーブルのように平面が広い家具は、天板の裏側に、反り止めを取付けます。反り止めのひとつ「吸付桟」は、釘や接着剤を使わずに、木だけで取付ける技法です。吸付桟は、天板の裏に蟻型の溝を彫り、そこに蟻型の桟を差し込みます。桟は、木の動きに柔軟に対応できるように、ほんの少しのアソビを残します。アソビの加減が腕の見せ所で、経験が必要です。吸付桟は、木が反ろうとする力を、木で防ぐ、有効な方法です。


木の反りを防ぐ「吸付桟」



テーブルなどの広い面積の家具の反りを防ぐための技法のひとつ。
釘や接着剤は使いません。


[長く使うコツ]


 暮らしの中で、日常的に木を使うと、長く使えます。木が家具になった後、ほとんどの時間を持ち主と過ごす訳ですから、木に触れ、木の性質を知ると、お手入れの仕方もわかってきます。木の家具は、基本は乾拭き。水や洗剤を使わずに、乾いた雑巾で拭きます。汚れやホコリが取りにくいときは、雑巾の半分だけ湿らせて硬く絞り、乾いたもう半分を一緒に絞り、生乾きの雑巾で拭きます。生乾き雑巾で拭くとほとんどの表面汚れは取れます。拭いた後は、乾拭きで仕上げます。雑巾の代わりに、米ぬかを詰めた布で磨くと、光沢が出ます。布製の袋に、米ぬかを入れ、水を少量入れて、磨くように拭き、仕上げに乾拭きします。米ぬかに含まれる油分がワックスの役割をして徐々に、自然な光沢が出てきます。身近にある、自然素材を使ったお手入れは、人にも環境にも安全です。無垢材を使った家具は、使い込んでこそ、魅力が増していきます。使うことで、古びることなく味わいになります。新品にはない、ツヤと深みのある色は、無垢材の特長です。月日を重ね、アンティーク家具のような雰囲気へ変化するその過程が、また楽しみでもあります。




[木を知ることで身近になる]


 木は、長い年月をかけて育ち、伐採、製材、乾燥され、家具になります。そのストーリーは、人間の寿命よりも長い時間がかかります。木を知ることで、家具や住まいに、単なるモノではない愛着がわいて来るように思います。木と共に暮らす中で、新たなストーリーが生まれ、さらに愛着が増すのではないでしょうか。100年かけて育った木は100年使いたい。その気持ちが大切なのだと思います。そして、次の世代まで長く使うためにも、伝統的な木工技術も、次世代に引き継いで欲しいと願っています。


感想・お問合せ先
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