リフォーム・リノベーション専門雑誌「プランドゥリフォーム」に掲載中のコラムのウェブ版です。
お兄ちゃんワンコは要領が悪く、弟ワンコは世渡り上手。
血のつながりはなくとも兄弟として育てると性格が違ってくるものなのか。
それとも先天的なものなのか。
少しでも大きな声を出したり「あら!?」といっただけで、何も悪いことをしていないのに、その場でフリーズするお兄ちゃんワンコ。それに比べ、ササーッと逃げて、捕まえづらいソファの下に潜り、上目づかいにこちらの動向を探る弟ワンコ。
要領が悪いのは完全にお兄ちゃんワンコで、ずる賢く要領がよい弟ワンコと比べると、かなり損をしていると思う。
先日も、テーブルの上に食べかけのシュークリームを置いて、ほんの一瞬キッチンに。テーブルに戻ると、そこにあるべき物体は跡かたもなくなっていた。「あー!!」と叫んだ足元には、フリーズするお兄ちゃんワンコ。
「どうして、食べちゃうの?いけません!」と怒る私に、ただただうなだれてじっと下を向く。
でも待てよ…、お兄ちゃんワンコは足が短くジャンプ力も皆無に近く、この低いテーブルにさえ乗れなかったはず。
「こらー!!」と探せば、弟ワンコはソファの下で悠々自適に、口の周りのクリームを美味しそうに舐めているではないか。
「ヤラレタ…」
お兄ちゃんワンコは、長男として育ったゆえに責任感が強く我も強い半面、微妙にどんくさい。血のつながりはないとはいえ、次男として我が家にきた弟ワンコは、じっくりとお兄ちゃんワンコを観察し、我が家で暮らすためのノウハウをあっという間に身に付けた。そんな調子のいい彼は人付き合いも上手く、犬仲間からも「よい子だね?」ととっても可愛がられている。
しかし、私だって騙されてばかりはいないのだ! どちらが悪いかを見極め、手の届かないソファの下に潜られる前に先回りして捕まえ、お説教ができるときだってある。
そんなとき、弟ワンコはふだん聞いたことがないような細く弱々しい声で「キャン」と鳴く。まるで私が悪いことをしている酷い人間だと思わせる、そんな切ない声で。
そして、軽く叱って手を離したとたん、「アッカンベー 」とでもいっているような顔をこちらに向け、走り去っていく。
そんな弟ワンコに、いつか勝てる日は来るのだろうか。
ちょっと微妙かもと思う…今日この頃。
作家・エッセイストの千石涼太郎さんのエッセイ
救急救命士で救急医療に従事したのち、カイロプラクティックを学び、開院した経緯をもつ院長が綴る健康コラム
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